映画風と映画的

近年ブライダル映像の世界では「映画のような」と言う言葉がよく使われます。 一眼ムービーの登場により映画のような画質で映像が撮れるようになったため定番の売り文句となっているのです。 私はこの「映画のような」という言葉の中には「映画風」と「映画的」という二つの意味があると思っています。 「映画風」とは見た目が映画っぽい、つまり映画を真似た雰囲気、手法を使っているということです。 背景がボケてて映画っぽい、レールやクレーンを使ってて映画っぽい、画面が横長で映画っぽい、空間の広い構図で映画っぽいなど。 ちょっと皮肉めいた言い方をすると「映画のモノマネ」です。 一昔前であればモノクロにする、セピアにする、フィルムダストのエフェクトをかけるなど編集で映画風の加工をしていましたがそれと同じですね。 それに対して「映画的」とは映画独特の表現を使用して本質的な映像作品であることを指します。 曖昧な説明ですがこの「映画的」とはなんぞやと言う問いは映画監督それぞれに哲学があり万人共通でこれだと言うことができません。 ですので私が考える「映画的」に関して説明したいと思います。 1・編集されている 何を当たり前のことを言ってるんだとお思いでしょうが「映画的」とは映像そのものでは無くカットとカットを繋ぐ編集点に存在すると思います。 少し言葉を付け足すと「ストーリー」を感じさせる編集がされているかどうかです。 例えば何かをじっと見ている新郎のカットの次に新婦のカットを入れれば新婦を見つめていると言う表現になります。 ここから新郎は言葉には出さないが新婦のことをとても愛おしく思っていると言うメッセージが伝えられます。 しかし新郎のカットの次にオニギリを入れれば新郎はお腹が減っていると言うコミカルな表現になります。 このようにカットの組み合わせ方次第で新たな意味を生み出し、それがストーリーやメッセージに繋がっていきます。 2・不特定多数の人に見せる事を前提としている ブライダルビデオは新郎新婦とその関係者のために作られるプライベート映像です。 そのため全く関係ない第三者に見せる事を前提としていません。 しかし基本的に映画は不特定多数の人に見せる事を前提としています。 ブライダルビデオでも赤の他人が見ても楽しめる要素がある事はとても大切だと思います。 ここで重要なことは出来上がった作品が誰でも面白く感じるかどうかはあまり関係ありません。 二人の為だけに作られた映像でも他人が感動することもありますし、本当の映画監督が作った作品でもつまらない映画はたくさんあります。 クリエイターが第三者を意識して自分が思う面白い作品を制作したかどうかに意味があるのではないかと私は思っています。 ただ作家性が強ければ強いほど万人受けしない場合があるのでここはバランスが大事ですね。 3・想像させる要素がある 世の中には情報やストーリーを伝える方法として「文章」「写真」「舞台」「漫画」「音楽」などの表現手法があります。これらと比較した場合映像の最大のメリットは「情報量が多い」ということです。 目で見た風景を忠実に再現し動きも音もあり時間と空間を自在に操れる手法は情報量という点では圧倒的だと思います。それゆえに特殊なテクニックを使わなくても「映っているだけで大きな価値」があります。 それでは映像の最大のデメリットは何でしょうか。 「見るのに時間がかかる」「予算がかかる」とか思いつくかもしれませんが私の思う最大のデメリットは「想像力を奪う」ということです。 文章や写真は情報量が少ないため人は想像します。人間の想像力は無限ですからうまく想像させれば映像以上のイメージを与える事ができます。 しかし映像は情報量が多いが故に人は受動的にイメージを受け取ります。分かりやすければ分かりやすいほど人間の脳は活動しないため考える力が低下します。 逆にあえて情報を省略すれば人はその隙間を埋めようと考え想像します。 映像作品は如何にうまく情報を割愛して見る人の想像力を喚起させるかが重要だと思っています。 以上が私の思う「映画的」ですが人によっては当然違った意見があると思います。 ただ「映画のようなブライダル映像」とうたっている業者の中で本当に映画を作ったことがある人はほとんどいません。 私は一応映画の学校を出ていますので小規模ではありますが映画作品を何本か制作してきました。 ありがたい事にその時の経験、知識が今の仕事に大きく貢献しています。 この「映画風」と「映画的」はどちらが大事ということでは無く両方をバランスよく織り交ぜる事が良質のブライダル映像を生み出すのでは無いでしょうか。


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